原子爆弾
ウランやプルトニウムなどの核分裂性物質に爆発的な核分裂連鎖反応を起こさせ、その際発生する巨大なエネルギーを利用する爆弾。1945年7月アメリカで初めて実験に成功。同年8月6日に広島、9日に長崎に投下された。1個の兵器として空前の大被害を与えた。
原子爆弾は核分裂性物質に臨界質量のあることを利用し、必要なときに急激に合体させると、全体が臨界質量以上になるので爆発するようになっている。ウラン235の1.5キロが核分裂によって放出するエネルギーはTNT爆薬3万トンに匹敵し、その際のエネルギーにより、表面温度は数千度、その中心では数百万度に達して直径数百メートルの大火球が生まれ強烈な熱線を放射、やがて秒速数百メートルの大衝撃波とともに強い放射能が飛散し、熱・爆風・放射線による甚大な被害を与える。

オッペンハイマー」

原爆の父を描いた、映画「オッペンハイマー」

「我は死神なり 世界の破壊者なり」
オッペンハイマーはヒンドゥーの聖典「バガヴァッド・ギータ―」の一節が頭をよぎったという

映画はアカデミー賞7部門を受賞。監督クリストファー・ノーラン。世界初の原子爆弾を開発したアメリカの理論物理学者ロバート・オッペンハイマー(1904~1967.ニューヨーク生まれのドイツ系ユダヤ人の息子)の生涯をえがいたカイ・バードとマーティン・J・シャーウィンの伝記小説『オッペンハイマー「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇』が原作(ピュリッツァー賞受賞)。
1938  ナチス・ドイツで核分裂発見(ハイゼンベルグ)
1939  ドイツがポーランドに侵入。第二次世界大戦はじまる。
1942 アメリカ政府の要請で、原爆開発の極秘プロジェクト「マンハッタン計画」に参画。チームリーダーに。
 ユダヤ人の彼は、なんとしてもナチス・ドイツに先駆けて原爆を完成する必要があった。
1943 ニューメキシコにロスアラモス国立研究所を設立。所長に就任する。
1945 5月8日ナチス・ドイツが降伏。このとき、原爆開発の継続を疑問視する意見もあったが、オッペンハイマーは日本に投下して戦争を終わらせると進言したと言われている。
1945.7.16  核実験「トリニティ」に成功
 2個の原子爆弾がトラックに積み込まれた。
「核は野球ボールほどの大きさの銀メッキされたプルトニウムの玉二つと小さなクルミくらいの大きさの金メッキされたベリリウムとポロニウムの起爆剤。 1945.7.12 それは衝撃を和らげるケースに収められ陸軍のセダンの後部座席に乗ってロスアラモスからやってきた」
(歴史家リチャード・ローズ)

広島・長崎に 原爆投下される
1945.8.6   8:15  ウラン型リトルボーイ(ちび)1945末の死者約14万人(当時の人口約35万人)
1945.8.9  11:20    プルトニウム型ファットマン(ふとっちょ)1945末の死者約7.4万人(人口24万人)   
映画監督のスパイク・リーはこう話す。「この世から一瞬にして、消滅・蒸発してしまった何万人もの人々。そして放射能被害はいまも残る」
この映画の是非は別として、僕は、原爆の父、物理学者、科学者の悲劇として割り切ってみたい。

1954   ソ連のスパイ容疑を受けたオッペンハイマーは秘密聴聞会で追及をうける。
 映画のラストはこの聴聞会の模様が延々とつづく。オッペンハイマーはこの公聴会で機密情報使用許可の取り消しという処分をうける。アインシュタインはオッペンハイマーに「公聴会に出て、お前たちはみんな馬鹿だと言って帰って来なさい」と言ったそうだ。
米政府と気丈に戦うオッペンハイマーの妻の姿が勇ましい。さすがアメリカ映画、オッピーのセックスシーンまである。

アメリカはその後も、核実験を都合百回以上ここで行った。当時、ラスベガスからこの実験のきのこ雲がよく見えた。大勢のアメリカ人観光客がサングラスをかけて見物したという。



量子革命コペンハーゲン

右 『量子革命』アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突
   マンジット・クマール 著 青木薫 訳 新潮文庫
1900年、放射線の不可解な現象を説明するため、M・プランクは「量子」という概念を考案した。その後、天才たちはこれを武器にニュートン力学を覆して、新しい世界像を提示し続ける。量子力学の解釈をめぐるアインシュタインとボーアの論争を軸に、ハイゼンベルグ、ド・ブロイ、シュレーディンガーなどの人間ドラマも交え、物理学百年の流れを追った白熱の科学ノンフィクション。

この700ページの大書の中に、アインシュタインは72回、ボーアは69回登場する。オッペンハイマーはわずかに3回。ページ数にして6ページに過ぎない。19頁にこうある。「オッペンハイマーにとって、それは”新しい洞察を得て、天にも昇るような気持ちを味わった時代だったと同時に、恐怖の時代”でもあった」と。

左  『コペンハーゲン
    マイケル・フレイン 著 小田島恒志 訳  ハヤカワ演劇文庫
1941年秋、ナチス占領下の北欧コペンハーゲン。ドイツ人の物理学者ハイゼンベルグは、かつて師と仰ぎ、親同然に慕っていたボーア夫妻を訪ねる。折しも原爆開発競争のさなか、互いに敵国人となり、新兵器を巡る暗闘の渦中にあった二人の天才は何を語ったのか。謎に包まれた会談を史実を踏まえて大胆に描きだす。
トニー賞受賞作品。

2016年6月4日~7月3日東京シアタートラム
翻訳 小田島恒志 演出 小川絵梨子
出演 段田安則(ボーア)宮沢りえ(マルガレーテ)浅野和之(ハイゼンベルグ) 

この戯曲の日本における初演は、2001年10月29日~11月18日東京新国立劇場(小劇場)
翻訳 平川大作 演出 鵜山仁 
出演 江守徹(ボーア) 新井純(マルガレーテ) 今井朋彦(ハイゼンベルグ)